
西洋哲学の流れをざっくり知りたい!なるべく難しい説明抜きで!
この記事では、西洋哲学の流れを古代ギリシアから20世紀までざっと概観できるものです。
登場する哲学者の数を絞り込み、哲学の理論もなるべく踏み込みすぎないようにしました。
教養として哲学の知識を持っておきたいという方にはぜひおすすめです!
また、大学入試での倫理の勉強にも対応しておりますので、高校生の方にもおすすめです!
「哲学って何?」― 哲学史を学ぶ意味

まずは原点に戻ってなぜ哲学を学ぶ必要があるのかについて考えたいと思います。
「哲学」と聞くと、難解で抽象的な議論を思い浮かべる人も多いかもしれません。けれども哲学の原点は、じつはとても身近な問いです。

「なぜ生きるのか?」「幸せとは何か?」「正しいことって何?」
こうした疑問を真剣に考えること、それが哲学の出発点でした。
哲学の歴史をざっと見てみると、著名な哲学者が現れているのは、人々が不安を感じている時でした。既存の価値観が崩れ、それに新たな道しるべを示す必要が生じたとき、哲学が生まれ、進化していくと考えられます。
哲学史を学ぶことは、人類が数千年にわたって積み重ねてきた「問いの記録」に触れることです。哲学者たちは、それぞれの時代に直面した問題に応じて答えを模索し、次の世代へとバトンを渡してきました。

つまり哲学史をたどることは、私たち自身の問いをより深く考えるための道しるべを手にすることでもあるのじゃ
古代ギリシャの哲学者たち:問いから始まる知の旅

哲学の物語は、古代ギリシアで始まります。そこではギリシア神話の世界がこの世の秩序のすべてという価値観が誰もが持っていました。
ところが、哲学の祖とされるタレスは、他国との交流もさかんな交流都市にいたことで、ギリシア神話の世界観が万国共通ではないことに気づき、神話に代わる概念として万物の根源を「水」に求めました。
ここから哲学が誕生しました。タレスの説に対して、「万物の根源は数だろ!」「いやいや火だろ!」「原子やろ!」…と展開されていきました。

そして次第に「世界とは何でできているか」から「善く生きるとは何か」が主題となっていったのじゃ。
そこで登場するのがかの有名なソクラテスです。
知ったかぶりで何でも主張する他の哲学者に対して、素直に自分は「知らない」ということを認めそれを誇りに思ったソクラテス。「正義とは?」「善とは?」と、人々に問い続けた彼の姿は、哲学者の原型そのものです。
その弟子プラトンは「イデア論」を唱え、本質を天上のイデア界に求め、理想的な真実の世界を描きました。
さらにプラトンの弟子アリストテレスは、本質を個々の事物の中に求めました。倫理学、政治学、論理学などを体系化し、西洋の知の基盤を築きます。
古代ギリシャの哲学は、「世界はどう成り立っているのか」「人間はいかに生きるべきか」という根源的な問いを私たちに投げかけ続けています。
古代ギリシャ哲学者の系譜図
自然哲学者(タレス、ヘラクレイトスなど)
↓
ソクラテス(問答法・無知の知)
↓
プラトン(イデア論)
↓
アリストテレス(倫理学・論理学・政治学の体系化)
中世哲学:信仰と理性はどう共存する?

古代ローマ帝国の崩壊後、ヨーロッパの思想を支配したのはキリスト教でした。中世の哲学者たちは、「神への信仰」と「理性による理解」をどう両立させるかに挑みます。

哲学は、キリスト教の神学を補完する学問と位置づけられ、「スコラ哲学」として営まれたのじゃ。「哲学は神学のはしため」という言葉は聞いたことがあるかの?つまり、中世では、哲学が神学より下の位置にあったのじゃ。
アウグスティヌスは、「人間の心の深みにこそ神の光が宿る」と説き、内面の探究を哲学の中心に据えました。
やがてスコラ哲学の代表、トマス・アクィナスはアリストテレスの哲学を取り入れ、「理性で神を理解する」道を切り拓きます。
中世哲学は、信仰の時代でありながら理性を軽視せず、人間が「考える存在」であることを示しました。信仰と理性のせめぎ合いは、やがて近代哲学への扉を開いていきます。
信仰と理性のバランス図

近代哲学:近代科学と理性の誕生

ルネサンスと宗教改革を経て、ヨーロッパに新しい時代が到来します。天文学や物理学が発展し、「人間の理性」が自然を理解する力を持つことが明らかになっていきました。

中世では絶対的な地位を占めていた神の存在が徐々に揺らぎ始め、人間の「理性」を重視する傾向が強まっていくのが近代の特徴じゃ
この流れを哲学として体系化したのがデカルトです。彼はすべてを疑う徹底的な懐疑の末に、「何も確実なことがいえないとしても、今現実に私が疑っているという事実だけは疑いようがない」とする「我思う、ゆえに我あり」という確実な基盤を打ち立てました。
スピノザは、数学的な定理などの証明方法を用いて、世界を説明しようとしました。絶対的存在である神を、自然と同一視することで証明したが、教会からは無神論者として異端視されてしまいます。
デカルトやスピノザのような考えは、「大陸合理論」と呼ばれます。注意してほしいのが、デカルトもスピノザも人間の理性を重視したのは間違いないですが、神の存在を真っ向から否定したわけではないということです。(それはニーチェの誕生まで待ちましょう)
一方でロックやヒュームら経験論者は、「人間の知識は経験から生まれる」と主張し、理性の限界を指摘しました。
理性と経験、この二つの流れがせめぎ合う中で、近代哲学は「人間はどう世界を理解できるのか」という問題を中心に発展していきます。
理性 vs 経験の対立軸
合理論(デカルト、スピノザ、ライプニッツ)VS.経験論(ロック、バークリ、ヒューム)
→理性と経験を統合しようとする流れ→カントに帰着
カントとその後:理性の限界を超えて

近代哲学の到達点に立ったのがカントです。彼は、理性と経験の対立を統合し、「人間は世界そのものを直接知ることはできないが、理性の枠組みを通じて現象を理解する」と喝破しました。

人間は、身の回りにある「物自体」は直接認識することができないが、人間の主観的な認識というフィルターを通すことによって、客観的になら認識できるというのじゃ
19世紀になると、近代哲学が描いた理想は矛盾に直面し、産業革命によってより進んだ資本主義経済が生む格差に苦しむことになります。
そうした中で、近代哲学を疑う、新たな哲学の流れが生まれます。
ドイツ観念論(フィヒテ、ヘーゲル)や実存哲学(キルケゴール)、唯物論(マルクス)など、多様な方向へと思想は広がります。
先ほどもあげたニーチェは、ヨーロッパの既存価値基準であったキリスト教を批判(「神は死んだ」)、フロイトは、「無意識」の発見により、これまでの哲学を根本的に問い直しました。
主要哲学者一部抜粋
- カント(ドイツ観念論)
- ヘーゲル(ドイツ観念論)
- ショーペンハウアー(生の哲学)
- ベンサム(功利主義)
- ミル(功利主義)
- マルクス(マルクス主義)
- キルケゴール(実存哲学)
- ニーチェ(生の哲学)
- ジェイムズ(プラグマティズム)
- フロイト(精神分析学)
- フッサール(現象学)
20世紀の哲学

20世紀には、第一次世界大戦や第二次世界大戦といった戦争が、哲学の思想にも大きな影響を与えました。全体主義や社会主義によって危機に直面しました。

哲学者たちは、この社会をどのように立て直せばよいのかということが一つの課題となったのじゃ
戦後、サルトルをはじめとする実存主義が流行しました。サルトルは、社会参加(アンガージュマン)を通じて人間本来の自由は実現すると論じました。
そんなサルトルに反論したのが、レヴィ=ストロースです。彼は未開社会が持つ「構造」に注目して、全ての社会は隠された構造の上に成り立っていると指摘しました。
彼の提唱した構造主義は、実存主義の思想を揺さぶり、これまでの常識や真理の解体を説くポストモダン思想が誕生するのです。
なお、構造主義に関してとてもおすすめな著作があります。
内田樹さんの『寝ながら学べる構造主義』です。新書でコンパクトでありながら、構造主義について理解が深まる一冊です。構造主義について知りたい方は買って絶対に損しない一冊です。
20世紀哲学の多様化マップ
実存主義(サルトル、ハイデガー)→「人間の存在」
分析哲学(ウィトゲンシュタイン)→「言語の限界」
フランクフルト学派(アドルノ、ホルクハイマー)→「社会批判」
構造主義/ポスト構造主義(レヴィ=ストロース、フーコー、デリダ)→「文化・権力・言語の構造」
まとめ


西洋哲学の歴史についてざっと確認してきたのじゃ。哲学者ごとの思想については詳しく触れられなかったので、それはまたの機会じゃな
この記事は、哲学を学ぶための入り口的な内容です。この記事を出発点に皆さんが哲学に興味を持っていただけたなら、幸いです!


