マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』に挑戦したいけど挫折しそう…挑戦したけど数ページ読んだら挫折した。
このような声はよく聞きます。実際に『失われた時を求めて』を専門に研究している筆者も一度挫折してしばらく放置している期間がありました。
この記事では、挫折せずに『失われた時を求めて』を楽しく読むための読書案内を目的としております。
『失われた時を求めて』を読んでみたい方や一度挫折したという方はこちらの記事が参考になるのではないかと思います。
また、『失われた時を求めて』について解説した記事があるのでこちらも参照いただければ幸いです。
まずは抄訳版で全体の流れをつかもう
まず『失われた時を求めて』の全体の流れをつかみたいという方は鈴木道彦さんが訳されている、『失われた時を求めて』の抄訳版がかなりおすすめです。
筆者も挫折した後は、抄訳版で作品に触れました。
通常『失われた時を求めて』は文庫本で13~14巻まであるのですが、抄訳版では3冊と非常にコンパクトにまとまっています。(それでも『カラマーゾフの兄弟』くらいの分量ですが)
そんなに短くなっちゃって話の流れが分かるの?
もっともな疑問ですが、全く心配ありません。
著者は作品の中でも特に重要な部分を抜粋していますし、飛んでいる箇所の話の流れもきちんと説明してくれています。
『失われた時を求めて』の魅力を十分伝えつつ、くどくどした描写の場面が省かれているため初心者には読みやすい作品となっています。
まずは抄訳版から入るのはアリです!
「スワンの恋」が収録された巻から読む
また、『失われた時を求めて』に最初に触れるのに「スワンの恋」から読むというのもおすすめです。
「スワンの恋」は第一篇『スワン家のほうへ』の第2部にあたる章です。
なぜおすすめなのかというと、この章だけ作品で唯一主人公が「私」ではなく、「スワン」であり異例な章となっているからです。
そのため、『失われた時を求めて』の文脈が全く分からなくても「スワンの恋」だけ取り出して1つの作品として読むことができます。
それだけでなく、「スワンの恋」は『失われた時を求めて』を一冊に凝縮した作品ともいわれるくらい、『失われた時を求めて』の魅力やエッセンスが詰まっているのです。
筆者がおすすめしている岩波文庫版だと、「スワンの恋」が収録されているのは2巻です。1巻から順番に読まずともまず2巻から読むのもおすすめです。
『失われた時を求めて』の入門書を読む
『失われた時を求めて』の魅力を味わうのは実際に作品に触れるのが一番ですが、とはいっても難解なので中々読むのに苦労されるかもしれません。
特に「コンブレー」から読み始めた方は最初の不眠の場面が延々と続いてうんざりされたかもしれません。
挫折しかけた人は入門書を読んでみるのもおすすめです。
まず、「コンブレー」から読み始めた方におすすめしたいのが吉川一義さんの『プルーストの世界を読む』です。
この作品は解説を「コンブレー」だけに絞った本です。
最初の挫折ポイントである不眠の場面はどのように読み解けばよいのかをじっくり解説してくれています。非常に分かりやすいです。
「コンブレー」をしっかりと理解することこそが『失われた時を求めて』の魅力を味わうためにどれだけ大事なのかを教わりました。
この本を読めば、一度挫折した「コンブレー」を、「なるほど、そんな風に読めるのか!」と大きな発見につながります。
他に『失われた時を求めて』の全体像を扱った新書サイズで分かりやすい本について3冊紹介しておきます。
ちなみに著者である吉川さんと鈴木さんは共に全訳を刊行された方々です!
プルーストは絵画にも造詣が深く、作品内でも絵画は重要なテーマになっています。
絵画が好きな方は絵画で読む『失われた時を求めて』もおすすめです。
コミック版に触れてみるのもアリ
『失われた時を求めて』は実はコミック版も出ています。
コミック版も非常によくできいて、読んでみるととても面白いです。
『失われた時を求めて』は息の長いプルーストの文章を味わうところに魅力がありますが、コミック版ではまた違った良さがあります。
反対に文章だけでは味わえない視覚的な魅力も加わった良い作品だといえるのではないでしょうか。
まとめ
『失われた時を求めて』を読むにあたって手助けとなる本について紹介してきました。
「挫折しないために」と書いてきましたが、実際挫折してもいいと思います(笑)
そして時間が経った後に読み返してみるとふと魅力にはまるということもあります。(筆者の経験談)
ぜひこの記事を参考に作品に触れてみてください!