バロックと聞いてどんな作品が思い浮かびますか?
なんとなく派手な作品のイメージ…と考えている方は大方正解です!ヴェルサイユ宮殿を思い浮かべていただければOKです。
実はバロックの作品は日本でもよく知られている作品がたくさんあります!必ず見たことのある作品がたくさんあります!
というわけでこの記事ではバロック美術(絵画)の魅力を伝えるとともに、なかでも絶対に知っておくべき作品を10作品紹介したいと思います!
ある意味で一番西洋絵画っぽいバロックの魅力を味わってみてください!
バロックの特徴は?
バロックの時代は17世紀で、中世と近代の要素を共に持ち合わせる、丁度過渡期にあたる芸術だといえます。
実は、バロックという言葉は当初マイナスな意味で用いられました。
バロックはポルトガル語で「歪んだ真珠」という意味で、均整のとれた古典主義に対して、動的でダイナミックなところが特徴です。
個々の画家については後で詳しく見るとして、バロックの特徴を簡単にまとめておきたいと思います。
カトリックのバロック
・信者に訴えかける
・ダイナミック
・明暗表現が顕著
プロテスタントのバロック
・親しみやすい
・風景画、静物画、風俗画
・寓意、教訓
バロックはキリスト教と密接な関係があるのですが、カトリックとプロテスタントでは全然傾向が違うということです。
今回紹介する中では、レンブラントとフェルメールがプロテスタントのバロックに属します。
もちろんこれはあくまでの分類です。例外はもちろんたくさんあります。
ムリーリョ
初めに紹介するのは、ムリーリョの『無原罪の御宿り』です。
キリスト教世界では、全人間は生まれながらにして罪を負うという原罪という考えがあります。
しかし、聖母マリアは人間でありながら、母アンナの体に宿った時から原罪を免れたとする教説がモチーフとなっている絵画です。
スペインでは「無原罪の御宿り」をテーマにした絵画が好まれ、その中でもムリーリョは最も成功した画家です。
彼の「無原罪の御宿り」シリーズは20作品以上遺っていて、上の絵はその中の1つです。
カラヴァッジョ
実際に人を殺めたこともあり、何かとスキャンダルなカラヴァッジョですが、バロックの中で最も重要な人物であることは疑いようがありません。
暗い部屋に左から光が差しており、バロックの特徴の1つである明暗表現が際立っています。
徴税所に入ってきた左にいるキリストがこれから救うマタイを指差している場面が描かれています。
実はこのマタイが誰であるのかはっきりせず、長らく論争が続けられているんです。
左から2番目の自分を指さす髭男か一番左の俯く若者のどちらかがマタイかで論争があります。ちなみにみなさんはどちらだと思いますか?
ベラスケス
この絵はどこかで必ず見たことがあるでしょう。有名な絵ですね!
題名になっているラス・メニーナスというのはスペイン語で女官たちの意味です。
描かれているのは宮殿の大きな一室でそこに王女(真ん中の女の子)、付き人、国王夫妻、そして一番左側にはベラスケス自身が描かれています。
国王夫妻はどこに描かれているのでしょうか?
実は王女の後ろに描かれている鏡の中に2人の人物が写っているのが見えると思います。これが国王夫妻なのです!
つまり、国王夫妻は私たち鑑賞側と同じ位置に立っているであろうことが分かります!
スルバラン
『ボデゴン』という原題が付けられたスペインの画家スルバランの作品です。
スルバランには数少ない静物画の作品です。
一見何の変哲もなさそうな静物画のうちに、神聖なものを感じ取ろうとするスペインの宗教観が反映されているといえます。
バロックの特徴である明暗表現が見られる作品で、黒い背景に輝く壺たちに感じ入るものがあるのではないでしょうか。
ラ・トゥール
長らく忘れられていたラ・トゥールでしたが、20世紀に再発見されました。
描かれているのは、ずる賢い人々が世間知らずな若者をだまして勝つという教訓が込められています。
ラ・トゥールはこうした教訓を垂れる絵画もありますが、彼は明暗表現が顕著な美しい作品でよく知られています。
クロード・ロラン
次に紹介するプッサンと並んでフランス古典主義を代表するクロード・ロランの絵画です。
人物が小さく描かれ、鮮やかな風景が前面に押し出されて描かれています。この頃はまだ西洋で珍しかった風景中心的な絵画です。歴史画ではありますが風景の方に目が惹かれますね!
クロード・ロランは新しい風景画の先陣を切った人物です!
左側にある建物はロランがローマでスケッチしたものが生かされて描かれているようです。
プッサン
まだこの時期までは絵画界で大物がいなかったフランスですが、プッサンとロランがフランス古典主義の代表として踊り出ました。
男たちが指差している墓石の銘文に書かれているのはラテン語で「ET IN ARCADIA EGO」。
アルカディアという場所は牧人たちから理想郷とされてきた場所ですが、そこでさえ死が存在するということを表そうとしています。
「メメントモリ」(死を想え)が教訓となっている絵画といえます。
ルーベンス
バロックといえばルーベンス!といわれるくらい典型的なバロックの絵を描くルーベンスです。
上の作品は連作『マリー・ド・メディシスの生涯』の一作品です。
英雄伝説の主題に世俗君主を大胆に適用して、絶対王政を賛美していることが窺えます。
ふくよかに描かれた女性はルーベンスの特徴の1つです。
ちなみに、『フランダースの犬』で主人公ネロが見たがっていたのはルーベンスの『キリスト昇架』と『キリスト降架』です。これも有名な作品です。
レンブラント
レンブラントのこの絵は世界三大名画の1つに数えられることもある作品です!
描かれているのは自警組織の人々の集合写真。集合写真はオランダで流行したジャンルですが、レンブラントは集合写真を劇的なものに脚色して歴史画のようにしてしまいました。確かに壮大な絵ですね。
そのためクレームがついてしまったそうです。
フェルメール
『真珠の耳飾りの少女』や『牛乳を注ぐ女』など世界的に有名な作品で知られているフェルメールです。
『デルフト眺望』は2作品しかないフェルメールの風景画の1つです。デルフトはフェルメールが生涯過ごした街です。
プルーストの『失われた時を求めて』では、登場人物の1人(ベルゴット)がこの絵に見入るうちに発作で死に至る場面があって印象的です。
フェルメールは今でこそ有名な画家ですが、当時はまだ知られていませんでした。プルーストはフェルメールの再発見に一役買ったと言われています。
プルーストの『失われた時を求めて』が気になる方はこちらの記事をご覧ください。
まとめ
バロックの代表的な画家の作品を1つずつ見てきました。
バロック絵画の作品の魅力が伝われば幸いです。気になった作品が見つかった方はぜひ深めてみて下さい!